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■飛び移り座屈とは?

飛び移り座屈とは、バネ等にみられる不安定現象のひとつです。
両端を固定した状態で曲面を作り、その曲面の凸側から押圧を加えた時、ある地点で座屈がおこり反転する現象をいいます。
日常でよく目にする製品としては、石油缶のふたでしょう。
飛び移り座屈 石油缶のふた
ふたの外側に向かってゆるやかなドーム上に膨らんでいます。上から指で押すと、ボコっと反転してふたが取れます。


エンボス製品

電化製品向けの印刷銘板は、顔となる操作部分にエンボス加工を施されています。
エンボス加工の操作スイッチ
管理人の家のファンヒーターの操作部分ですが、スイッチ部分のドーム状に起伏している箇所がエンボスです。
ファンヒーター以外にも、炊飯器や電子レンジ、その他多くの電化製品にエンボス加工された印刷銘板が使われています。


エンボスと飛び移り座屈

印刷銘板にエンボス加工を施す場合、不具合要因のひとつに、エンボス部分の復帰障害があります。

上図のようにドーム状のエンボスを指で押した時、通常は自力で復帰しなければならないのですが、ペコっと反転し、凹んだ状態を保持してしまいます。
電化製品でこの状態になってしまうと、スイッチがONしたままになってしまいます。
エンボス加工にとっては致命的な欠陥です。
しかし、単純なドーム形状の場合、または小判型をしたエンボス形状の場合には、材料の変形に起因する復帰障害は時々みられますが、飛び移り座屈による復帰障害はおこりません。曲面の周長よりもドームの立ち上がり部分の周長の方があきらかに短いこと。さらにはエンボスの立ち上がりに接近して両面テープでモールドに固定されます。これにより立ち上がり部分が固定されます。


飛び移り座屈で復帰障害が起こりやすいエンボス形状

今回解決したい本題です。
ドームの外周にリングがあるエンボス形状は、飛び移り座屈による復帰障害が起こる可能性が高く、今回問題解決を迫られているエンボスもやはり外周にリングがあります。

上図はエンボス形状です。
φ14のドームの外側に1mmのリングがあります。
ドームの高さは0.3mm〜0.5mmを狙い、リングの高さは0.2mm〜0.3mmを狙います。

なぜリングがあると復帰障害が起こるのか?

ネットで飛び移り座屈について調べたのですが、この現象について明確な答えを導き出せるWEBサイトは見つかりませんでした。
さらに、飛び移り座屈による復帰障害を未然に防ぐためにはどうしたらよいか、という今回の問題の解決策につながる情報を掲載したサイトも皆無です。
つまり、自分で考えて解決するしかないということのようです。

通常のドームでは発生率が低い復帰障害が、ドーム形状の外周にリング状のエンボスがある場合、その発生率が上がるのはなぜでしょう?
考えられる原因としては、
@曲面の周長とドーム立ち上がり部分の直径の差が少ない。
ドーム立ち上がり部分の直径は上図の通り14mmです。
それに対して、エンボスの高さが0.4mmの場合、曲面の周長は、14.021mm。エンボス高さが0.3mmの場合には14.010mmとなります。
その差は、0.4mmの場合は0.021mm、0.3mmの場合は0.010mmです
つまり、ドームの状態と平らになった状態での差が少ないために、押圧によって反転してしまうのです。
ゼロ基点が平面の場合には、もちろん反転しませんが、実機の場合には、両面テープの厚み、スペーサーによる浮きがあるので、エンボスのゼロ基点と実際のモールドとの間には、0.3mm〜0.5mmほどの隙間ができます。その隙間部分で反転してしまいます。
Aリングがあるために、ドームの立ち上がりがゼロ基点に到達できない。

赤線が図面そのままのライン。そして黒線が実際にエンボスして出来上がったラインです。
ドームとリングの谷の部分がゼロ基点までたどり着いていません。これにより谷部分のX座標が左へ0.10025mmずれてしまいます
つまりφ14であるはずのドーム径が14.2005mmとなってしまいました。
そしてエンボス高さが0.3mmなので、周長は14.2008mmです。
ちなみにエンボスを0.4mmまで高くすると、周長は14.21021mmとなります。
差は、0.3mm0.0003mm、エンボス高さ0,4mmの場合は0.0097mmです。
わかりずらいので並べてみます。

 図面上の差  出来上がった製品
エンボス高さ0.3mm 0.010mm 0.0003mm
エンボス高さ0.4mm 0.021mm 0.0097mm

図面上の数値でさえ条件は悪いのですが、実際に仕上がった製品の数値はご覧の通りで、この状態で安定した製品ができるはずの無いことを立証しています。
Bエンボスのエッジ部分がY方向にずれたことで、クリック(エンボスを押した時)時にエンボスドームのエッジ部分のアソビが大きくなり、形状を保持できなくなる。
エンボスの立ち上がり部分がしっかりと固定されていれば、飛び移り座屈による反転は起きにくいのですが、ゼロ基点から浮いたことによる隙間で、上下にアソビができてしまいました。これによりドーム径が広がりやすくなってしまいます。
上図の場合、クリック押圧により、7時の方向に力が加わります。つまりドーム径が広がります。


解決方法の考察

原因がわかれば、その対応策も見えてくるのですが、実際のエンボス加工で図面通りに仕上げることは困難です。
可能な方法を模索している状況ですが、その内容は次ページでご紹介します。

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