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■エンボスの復帰障害の解決法

エンボスをクリックした時に、形状が元に戻らずへこんだままになってしまうという飛び移り座屈が原因の不具合解決の考え方は正しかったようですが、まだ安定性に欠けるようです。
安心して量産を行うためには、もう一工夫が必要です。

リングとドームのエンボスパーツは前ページにも掲載しましたが、1つのパーツが写真のようなユニットになっています。
エンボスのパーツ
今回は、リングの中に入るPINのR形状を変えたものを準備しました。。
エンボスピン
左から、頂点がほぼ平らな形状のPIN。真ん中は今まで使用していたPIN。そして一番右が円錐形に近い曲面に仕上げたPINです。
狙いは下図のようになります。

紫ラインは頂点がフラットなピン
赤ラインが今まで使っていたエンボスピン
黒ラインが円錐形に仕上げたピン

実際には、全てのピンの立ち上がり部分は、一旦急勾配で上がり、そこから狙ったラインで作成しています。

拡大するとこうなります。

この拡大図もイメージ図なので、リングとドームの谷部分の立ち上げ部分の勾配は省略しています。


飛び移り座屈によるエンボス復帰障害に強いピン形状は?

今まで使用していた自然な曲面のピンと、あらたに作成した形状の異なる2本のピンを使用しテストを行いました。
なおリング高さは、前ページでは0.3mmを狙いましたが、実際の量産では0.2mmを狙いました。
ドームの高さを0.45mm〜0.5mm狙いとしたため、リングを0.3mmとしてしまうとリングばかりが際立ち、見栄えが悪くなってしまうからです。

そして結果です。
飛び移り座屈による復帰障害、つまりエンボスが反転してしまい復帰しないという症状に対して、一番効果があったのは頂点がフラットなピンでした。
前ページで書いた周長の考え方を適応すれば、一番周長の長くなる頂点がフラットのピンが有利なことは想像がつきますが、高さを同じ0.5mmとしたときに、上図のようにリングからの立ち上がり部分の勾配が一番きつくなります。
これは、谷部分の反転を抑えるのに効果があるようです。


さらに一歩進んだな解決案

問題点となった飛び移り座屈による反転は、前ページと今回の頂点がフラットなピンでほぼ解決に近づきましたが、実際に量産していく中でさらに改良が必要です。
今回の製品の場合ですが、エンボス高さが0.55mmを超えるとドーム形状の凸力が強くなり、ボタンを押した時に重く感じます。
また逆に0.4mm以下になると経時変化でエンボスがへたり、ドーム形状がフラットになってしまいます。
つまり、量産中にシビアな高さ管理を要求されることを意味します。
今回、上図はドーム高さを0.5mmとしましたが、実際にクリック感を得られ、なおかつ反転しない高さは0.45mmが最適なことがわかってきました。
そこを狙った場合、下限高さの0.4mmまで0.05mmしか余裕がありません。
量産で何千個と安定した製品をエンボスするためには、もう少し安全マージンが必要です。

そこで次の案として、フラットにした頂点を球面の中心ではなく、微妙に位置をずらすことを考えています。
これによりエンボスドームへの押圧は不均等になり、ドームとリングの谷間の部分への力も不均等になります。
押圧によるベクトルは真下方向ではなく、ずらした方向と逆の斜め下方向に向かいます。
つまり、エッジ部分のつぶされかたを故意に不均一にすることで今以上の復帰力を保つことができます。

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